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小学校3年生までのぬらし絵ー色の体験から

2010.8.30

今回はシュタイナー学校独特の手法の1つである「ぬらし絵」
をテーマにしたいと思います。

幼稚園から小学校3年生まで、ぬらし絵という技法で、絵を
描きます。ぬらし絵というのは、ぬらした紙の上に透明水彩
絵の具で絵を描く技法です。

日本の一般的な図工の時間には、乾いた紙に、不透明水彩絵
の具を使います。乾いた紙に描くのは、にじんでしまう=輪
郭線が綺麗にでないから、日本の図工の概念ではダメなのか
もしれません。

それに対して「ぬらし絵」では、ぬれた紙に絵の具をおきま
すから、じわっとにじみます。「にじみ絵」とも言いますね。
にじむので輪郭ははっきり出ません。しかもにじんで他の色
と混じる様子をコントロールすることはできません。コント
ロールできないところで、水の動きにまかせて色の混じり合
う様子を見て、観察して、受け止めます。

3年生までの「ぬらし絵」の授業では、具体的な物体を描き
ません。植物とか動物とかを意識的に描くことをせず、「色
の体験」をします。できあがるものは、何の形とも言えない、
また何の形ともうけとれる、いわゆる「抽象的」な絵です。

「抽象的」という言い方が正しいとは思いません。「抽象的」
というともっと思考に支配されたもののような印象があるの
ですが、小学校低学年でする体験は、もっと、感覚、感情豊
かなものです。

色というのは強く感覚に結びついています。
例えば、黄色という色を見たり、身につけたりすると、それ
が気持ちに作用します。想像してみてください。黄色い壁の
部屋に入ったら、どんな気持ちになるでしょう。黄色でも、
レモンイエロー、山吹色、少しオレンジがかった黄色・・・
感じる「温度」的なものも、ワクワクしたり、とびはねたく
なるような感覚、心が温まるような感覚・・・色々な感情が
湧いてくるでしょう。

また、青という色から何を感じるでしょう。

黄色とは全く違った感覚が湧いてくることが、容易にイメー
ジできると思います。

このようなそれぞれの色の特質を心で感じ取るために、シュ
タイナー学校低学年では、例えば「黄色と青だけの絵」を
描きます。

スキップをするように飛び跳ねる黄色。その周りで黄色さんと
友達になりたくて静かに歩いてくる青さん。青さんに囲まれて
垣根の向こうからこちらを覗き見しているような黄色さん・・。

色と結びつく感覚をもっと体験できるように、先生がちょっと
したお話をしながら描きます。

シュタイナー教育では魂の3つの特質「思考」「意志」「感情」
を育てていきます。ぬらし絵による色の体験は「感情」に強く
働きかけるものです。色を感じ、感じるままに受け取ると、自
分の感情も発散します。自分の中にある喜びの感情を素直に出
すことを、黄色と戯れながら体験したり、心の奥底から燃え上
がる強い闘志のきらめきを赤の体験をしながら発散させること
ができます。

そして、様々な色を体験し、その感情を育てたり解放させたり
することで、子どもの感情の働きをのびのびと育てることにな
ります。

この色の体験が魂の感情の部分に繋がっていることを知ると、
ペインティングがセラピーの手法として用いられていることも、
納得できるでしょう。

シュタイナー学校で、クラスの特質を考えながら、ペインティ
ングをうまく活用している先生によると、

  • クラス全体がうまくまとまるようになった
  • 子どもの集中力がついた
  • 学力が伸びた
  • 難しい生活環境で苦しんでいた子どもが落ち着いた
  • 休憩時間や体育の時間に怪我をする子どもが減った

というような改善点も見られたそうです。

実際にぬらし絵をしてみて、どう感じるか、まだ未体験の方に
はぜひやってもらえたら嬉しいです。図工が苦手だったという
人も大丈夫。上手下手はありません。ただ、色の動く様に心を
ゆだねて、感じ取る体験を、大人の方もして欲しいと思うので
す。色に吸い込まれる、癒しの時間です。





ペインティングは、
眠りと覚醒の間
ースピリチュアルな世界と私たちを取り巻く現実世界ー
を行ったり来たりする体験へと導く。

ルドルフ・シュタイナー